2025.06.10進路情報中学生高校受験
「受験生になったはずなのに、うちの子は全然勉強しない」「夏休みに入ってもピンときていないみたい…」と、ついイライラしたり、不安に思ったりする保護者の方は少なくないかもしれません。周囲の友達が塾や模試で忙しそうにしているのを見ると、なおさら焦りを感じてしまうものです。
しかし、子どもが「本気になれない」背景には、必ずと言っていいほどそれなりの理由があります。単に「怠けている」
「やる気がない」というわけではないケースが多いのです。ここでは、受験生なのになかなかエンジンがかからない子への向き合い方を 3つの観点から深掘りし、親としてどうサポートできるのかを考えてみましょう。
まず、「やる気が出ない=勉強したくない」と決めつけるのは早計です。意外にも、多くの子どもは「そもそもどこから手をつければいいのか分からない」「何が自分の弱点か把握できていない」など、学習の**“やり方”**が曖昧なまま時間が過ぎてしまっています。
学校からの宿題やワークは、指示通りにこなすことができるかもしれません。しかし、「受験勉強」となると範囲は中学 3 年分におよび、その中で何を優先すべきかを自分で考えなければならない段階にきています。勉強量は膨大なのに、効率的に進める方法を知らない、もしくは情報過多で混乱しているとなれば、最初の一歩を踏み出すのは難しいでしょう。
また、子どもが本気になれないのは、「ゴールが見えない」という状況も関わります。そもそも志望校を決めていなかったり、決めても「本当にそこに行きたい」という気持ちがはっきりしなかったりすると、「勉強の必要性」を強く認識できません。
たとえば、「周りが受験受験とうるさいから、とりあえず何かしなきゃ…」という程度の意識だと、自主的に学習計画を立てて走り出すのは難しいでしょう。「あの高校に行きたい」「将来こういう職業を目指したい」というように、**“具体的なモチベーション”**が芽生えにくいと勉強へ本腰を入れにくいのは当然といえます。
この段階で親ができるサポートとしては、**「何を」「いつまでに」「どうやって」進めるのかを一緒に考えることです。紙やホワイトボードに書き出すなど、視覚的にリスト化すると子どもも取り組みやすくなります。また、志望校が決まっていないなら、同程度の偏差値帯で興味が持てそうな学校をいくつかピックアップして、「夏のうちに 1〜2 校はオープンキャンパスに行ってみよう」と誘導するのも一手。
情報が曖昧だったり、目標が見えなかったりすると、子どもの脳は「できない・分からない→面倒臭い→動きたくな い」という流れに陥ります。だからこそ、 “勉強のやり方”と“目標の具体化”**をセットでサポートしてあげるのが効果的です。
「受験生なら 1 日 5 時間勉強は当たり前!」などと一気に高いハードルを設定すると、多くの子は「そんなの無理」と思ってしまいます。特に、これまで本格的に勉強してこなかった子ならなおさら。「やる前から拒否反応が出る」状況を作ってしまうと、取り戻すのが大変です。
実は、人は**“できるかも”と思える目標をクリアしたときにやる気が生まれやすいのです。成功体験がないまま、ただ「やれやれ」と促すのは逆効果になりがち。そこで有効なのが、“小刻みの目標設定”**です。たとえば、英単語を 1 日 10 個覚える、数学の問題を毎日 3 問だけ解く…。確かに地味ですが、少しずつ達成感を味わうことで、やる気のエンジンをかけるのに役立ちます。
ある保護者の声で、「子どもが『英単語を毎日 5 個ずつ覚える』という目標を立てたら、1 週間後に『思ったより覚えられるから 10 個に増やそうかな』と言い出した。そこから一気に勉強に前向きになった」というエピソードを聞いたことがあります。これはまさに、**“小さな成功体験” が次のステップへのやる気につながった例です。 毎日 3 問だけ解く数学ドリルも、最初は「これくらいなら何とかやれそう」と思っていた子が、慣れてくると「もうちょっと難しい問題もいけるかも」という自信をつけていくのです。こうした流れを作るためには、親が無理に量を増やそうと せず、あくまで “子どものペース”**を尊重することが大切。
さらに、達成したときには「ちゃんとやりきったね」「すごいじゃん!」と具体的にほめてあげると、子どもは「またやってみようかな」と思いやすくなります。小さな成功の繰り返しが、結果的に大きな目標への第一歩となるのです。
子どもがなかなか本気を出さないとき、親としては「もう知らない!」と放置したくなる日もあれば、「いい加減にし ろ!」と強く叱りたくなる瞬間もあるでしょう。しかし、どちらの極端な手段もあまり効果的ではありません。
放任すると、そもそも勉強のやり方が分かっていない子は何も進められずに時間だけが過ぎる可能性が高いです。逆に監視モードになりすぎると、子どもは「うるさいな、勝手にやらせてよ」と反発してしまったり、親がいないときにま ったくやらなくなったりします。**“絶妙な距離感”**を探るのが難しいのですが、親としては「困ったときには声をかける」「目標設定の段階で一緒に考える」などサポートしつつ、“最終的な行動”は子ども本人に委ねる姿勢を心がけたいところです。
たとえば、子どもが「今から本気出しても間に合わないよ…」と弱音を吐いたら、「残りの期間でここまでやれば、まだ十分に伸びるよ」と具体的に可能性を示すのが◎。一方「もっと本気出しなさい!」と精神論で責め立てるのは逆効果です。
また、「模試の判定が悪かった…」と落ち込んでいるときには、「じゃあ次はどこを伸ばせば点数が上がるかな?」と **“次につなげる思考”**を促すと、子ども自身が前向きに立ち直りやすいでしょう。子どもが自分で「あ、ここを直せばいいんだ」と気づけるよう誘導するのがポイントです。
親が子どもより焦ってしまい、つい強く言いすぎるケースも少なくありません。そんなときは、塾の先生や学校の担任など、外部の大人に相談してみるのも有効です。プロの立場から見ると「この子はここをサポートすれば伸びるか ら、今はそれほど悲観的にならなくてもいい」というアドバイスをくれることもあります。
第三者からの客観的な意見を聞くことで、親の不安やイライラが軽減され、子どもへの接し方にも余裕が生まれるはずです。親が落ち着いていると、子どもも委縮せずに済むので、結果的にやる気を引き出す環境に近づきます。
「本気になれない」は“最初の一歩”を踏み出しにくいだけかも
夏休み前後の中 3 を見ていると、周りが「受験だ!勉強だ!」と盛り上がっているのに、本人はどこ吹く風…なんて状況がめずらしくありません。保護者としては、内心気が気ではないものの、頭ごなしに叱っても逆効果。「本気になれない」背景には、**“やり方が曖昧”や“ゴールが見えない”**などの理由が隠れていることをまず理解しましょう。
一方で、ちょっとした成功体験を積み重ねることで、「意外とやってみるとできるかも」「この目標なら頑張れそう」と思い始める子も多いです。**“勉強への入口”**を低めに設定し、小さな達成感を味わいながら次のステップへ進むプロセスをサポートしてあげるのが効果的。
こうした具体的なアクションを起こすことで、子どもは「何をやればいいのかが少しずつ分かってきた」「ここまでは自分でもできそうだ」と感じられるようになります。やがて、その気持ちが“もう少し頑張ってみよう”に転じるとき、子どものやる気は大きく変わり始めるのです。
受験期は親子ともに焦りがちですが、焦って強引にやらせても持続力は期待できません。むしろ「どうすればできるようになるか?」を一緒に考え、小さな達成感を繰り返すうちに、子どもは「自分でもできるんだ」と思えるようになるもの。
「本気になれない」のは、やる前から壁が高く感じられるだけかもしれません。そこで、夏休みや休日を利用して、まずは**ほんの少しでも“行動に移させる”**仕掛けを作ってあげることが大切です。最初の一歩を踏み出せれば、子どものエンジンがかかるタイミングは意外と早いかもしれません。ぜひ、親子で一緒に試行錯誤を重ねながら、受験勉強のスタートダッシュをサポートしていきましょう。